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質問妊娠中の女性のトキソプラズマ感染について,受けるべき検査と結果の評価について教えてください。
回答

先天性トキソプラズマ症では妊婦検診は必要で、早期診断早期治療によって先天性トキソプラズマ症の発症と先天性トキソプラズマ感染を防ぐ化学療法を行う必要があります。

トキソプラズマ原虫の生活史からも理解出来るように、特にトキソプラズマ抗体陰性の妊婦は猫との接触は避けた方がよい(但し、臨床経験例では、殆どの症例の母親は猫との接触を否定しております)。医療経済の観点から先天性トキソプラズマ症の妊婦検診を不要との説もありますが、フェニールケトン尿症や他の先天性感染症より頻度が低いと言える根拠はありません。
以下,重要な点について列挙します。

  1. トキソプラズマ原虫が妊婦や胎児に感染した場合の殆どが不顕性である。
  2. 臨床症状を呈した先天性トキソプラズマ症の臨床症状は、流産、死産、水頭症、精神・運動障害、網脈絡膜炎、小眼球症、脳内石灰化など多様である。
  3. 出生時に臨床症状を呈さない先天性トキソプラズマ感染児の場合にも、成人までに網脈絡膜炎を起こす可能性が大きく、化学療法や経過観察が必要である。
  4. 胎児への感染は妊婦の初感染の場合に起きやすい。
  5. 早期診断、早期治療で胎児感染や先天性トキソプラズマ症の発症を防止でき得る。
  6. 先天性不顕性感染や先天性トキソプラズマ症の活動期が過ぎると慢性期に入り、脳やリンパ節や筋肉内に嚢子型虫体として終生感染し、日和見感染菌として存在する。
  7. 嚢子型虫体に対する化学療法は未確立である。
  8. 先天性トキソプラズマ症や先天性トキソプラズマ感染の予防のために妊婦検診が必要である。