「医療機関向けコンサルテーション」へ質問のあった項目のうち,よくある質問とその回答を掲載します。コンサルテーションする前に一度はご覧下さい。

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質問妊娠33週目の妊婦の条虫症に対する駆虫の是非
回答

回答1

妊娠33週ということで、駆虫薬の胎児に対する毒性はそれほど大きな問題にならないかもしれませんが、 基本的に駆虫薬は妊婦および胎児に対する安全性が確立されておりませんので、現時点で駆虫薬を積極的に使用することは薦められません。駆虫に依る下痢が早産を誘発するリスクも考えなければならないでしょう。妊娠中の駆虫は、寄生虫に対する治療が母子の生命の維持や安全に必須(例えば重症の熱帯熱マラリアの場合など)と判断される場合に限ると思われます。そうでない場合は分娩後の駆虫という判断でよいのではないでしょうか。

分娩後授乳時の駆虫薬使用については、以下を参照してください。

プラジカンテル投与後の授乳に関しては、その血中濃度が9時間後に9.5%(20mg/kg投与時)以下になることから、初乳の重要性を考え24時間後を一つのめどとしましたが、最近、プラジカンテルにはいくつかの変異原物質や発ガン物質との共同作用により変異原性を示唆する報告も出ていますので(疑問視されてはいますが)、添付書に従い投与後当日を含め72時間は母乳は搾乳廃棄にするべきでしょう。なお、妊婦に対する安全性は確立されていませんので禁忌であることを、念のために申し添えます。

回答2

  1. 検出された虫卵の同定を行う;有鉤条虫症の鑑別診断が必要です.
  2. 患者さんが至急の治療を望めば、プラジカンテルの妊婦への安全性が確立されていないことに同意した上で治療を行う.
  3. もし至急の治療を望まなければ、出産後に治療を行う.その場合、乳汁への移行を考慮して(治療後72時間は授乳させない)治療を行う.

治療に当たっては、当学会ホームページにあります「寄生虫症薬物治療の手引き」をご参照下さい.尚、プラジカンテル単回投与時の量は、5-10 mg/kgが無鉤条虫症のみならず、有鉤条虫症にも推奨されています.

質問サナダ虫に感染している幼児四歳が受診しました。必要な治療、検査、集団生活(保育園)上での制限を教えてください。
回答

●まずは虫種の同定が重要です。排出された片節、あるいは糞便の検査で寄生種を特定して下さい。

●条虫症は、有鉤条虫症など、僅かな例外を除き、ヒト~ヒト感染しません。原則として、生活上の注意は不要です。 駆虫には、通常、プラジカンテル(商品名ビルトリシド)を使用します。条虫の駆虫(成人の場合)については、ホームページ「学術・教育」の「寄生虫症薬物治療の手引き」をご覧下さい。